コロナ禍での整理解雇を考える

 

 2021年7月9日現在、新型コロナウイルス感染症による経済的な打撃などで、11万326人(見込み数含む)の労働者が解雇等の対象になっています(厚生労働省「新型コロナウイルス感染症に起因する雇用への影響に関する情報について」)。

 

 コロナ禍における整理解雇も、解雇の4要素(人員削減の必要性・解雇回避努力義務の履行義務・人選の合理性・手続きの妥当性)に従って有効性が判断されることに変わりはありません。

 

 さらに次の点

 

 ●外出自粛等の影響がどの程度継続するかにつき十分な検討を行ったか

 ●補助金、給付金等の公的な援助を活用したか 

 ●助成金により促進が図られている出向による解雇回避措置を検討したか

 

 なども、特に重要になると考えられ、「コロナ禍による経営の悪化」という抽象的な理由だけで、整理解雇が有効となるわけでありません。 

 


裁判例

 コロナ禍による業績悪化を理由に運転手を解雇したタクシー会社を相手方として、地位保全や賃金仮払を求める仮処分が申し立てられた事案であるセンバ流通事件決定では、コロナ禍により2020年4月に利用客が著しく減少したことにより会社の売り上げも激減し、単月で1400万円以上の支出超過となったことや、同月時点で3000万円をこえる債務超過となっていたことを事実認定しつつも、会社に最大の貸し付けを行っている債権者は初代代表取締役個人および初代代表取締役が経営する別会社であり、かつ初代代表取締役は形式的には会社の役職から外れていても事実上経営に関与しており、それゆえにそれらの貸し付けは即時全額の支払いの必要性があるものともいえず、債務超過は額面ほど大きいとは言えないと述べ、人件費については、運転手を休業させ雇用調整助成金を申請すればその大半が補填されることが確実であったとし、さらにその他経費削減を行う余裕があったと認定して、「人員削減の必要性は、直ちに整理解雇を行わなければ当欄が必至であるほどに緊急かつ高度の必要性であったことの疎明があるとはいえない」と判示した。また、雇用調整助成金の先生や臨時休車措置をとっていなことから、解雇回避措置も不十分であるとし、また人員選択の合理性も手続きの相当性も低いとして、整理解雇はむこうであると判示した。

 この裁判例は、整理解雇法理の考え方をコロナ禍における社会政策に照らしてみた場合の帰結に忠実なものといえる。今後、コロナ禍を理由とする整理解雇事案については、この裁判例による、雇用調整助成金の特例に対する考え方が広く採用されることが予想される。