それでは、アスベストにばく露しているとどのような病気にかかる可能性があるのでしょうか?
3、アスベストが原因で発症するとされる疾病
アスベストの繊維は非常に細かいため空気中に飛散しやすく、その粉じんを吸い込むと肺の組織内に沈着し、長期間滞留することによってさまざまな疾病を引き起こすとされています。
(1)アスベストとの関連性がある疾病
アスベストとの関連性があると考えられている代表的な疾病は、以下の5つです。
① 石綿肺
粉じんの吸入により肺が線維化する「じん肺」という疾病のひとつです。初期症状としてはせき、たん、息切れなどがみられ、進行すると重度の息切れや呼吸不全を引き起こすといわれています。アスベストを長期間、大量に吸引ばく露することで発病するとされています。
② 肺がん(原発性肺がん)
肺がんのうち、気管支や肺胞を覆う上皮に発生する悪性の腫瘍を原発性肺がんといいます。せき、たん、血痰(けったん)、胸の痛み、息苦しさなどの症状がみられますが、進行するまではほとんど自覚症状がないこともあります。
③ 悪性中皮腫
胸膜、心膜、腹膜など表面を覆う細胞層にできる悪性腫瘍のことを、悪性中皮腫といいます。症状としては、せきや胸の痛み、呼吸困難、胸部圧迫感のほか、発熱や体重減少がみられることもあります。
アスベストの吸引以外の原因で発症することもあるとされていますが、まれなケースと考えられます。
④ びまん性胸膜肥厚
肺を覆っている胸膜が線維化し、厚くかつ硬くなっていく病気です。繊維化が進行するにつれて呼吸機能が低下し、息切れなどがみられるようになります。
⑤ 良性石綿胸水
肺の外側とあばら骨の内側などを包む胸膜の炎症により、胸水がたまる病気です。症状は特に現れないことが多く、ほとんどの場合は胸水も自然に消滅するといわれています。
ただし、胸水が消滅せず、呼吸器障害が残ることもあります。
(2)発症するまでの潜伏期間
アスベストを吸い込むと、すぐに疾病を発症するわけではありません。アスベスト健康被害は、長い潜伏期間を経て発症するといわれています。
各疾病が発症するまでの平均的な潜伏期間は、以下のとおりです。
疾病 潜伏期間
石綿肺 15~20年
肺がん 15~40年
悪性中皮腫 20~50年
びまん性胸膜肥厚 30~40年
良性石綿胸水 40年程度
4、アスベストが原因の疾病を発症した場合の対処法
過去にアスベストを取り扱う業務に従事しており、アスベストが原因と考えられる疾病を発症した場合は、労災保険給付または石綿健康被害救済給付金の対象となる可能性があります。
また、国に賠償金や給付金を請求できる可能性もあります。
アスベストを扱う工場で働いていた方やそのご遺族の場合、国に対して訴訟を起こした上で和解すれば、和解金として賠償金を受け取れる制度があります。この制度により国から支払われる賠償金額は550万円~1300万円です。病態や病状によって金額は変わります。
建設現場で働いていた方や一定範囲のご遺族の方には、「建設型アスベスト給付金」という制度があります。同制度は、訴訟を提起する必要はなく、要件を満たせば手続きのみで給付金を受け取ることができます。この制度により国から支払われる給付金額は550万~1300万で、賠償金のケースと同様に、病態や病状によって受け取れる金額は変わります。
賠償金や給付金を請求するためには、医師の診断書を始めとしてさまざまな資料を提出する必要があるほか、手続きも複雑です。個人の方が対応するのは難しいため、専門家に相談することをおすすめします。
弊所では、アスベスト健康被害に関するご相談は無料で承っております。また、賠償金、給付金の対象となる可能性がある場合は、必要書類の収集や調査もお手伝いいたします。
対象になるのかわからないといった場合でも、まずはお気軽にお問い合わせください。
5、まとめ
アスベストの使用は、現在は全面的に禁止されています。しかし、過去には整備されていない環境で大量のアスベストが製造、使用されてきました。アスベストによる健康被害は長い潜伏期間を経て発症するため、今後も被害者は増えると考えられます。
アスベストが原因の疾病を発症した場合は、早めに賠償金、給付金の請求を行うことが大切です。ご自身のことはもちろん、ご家族のことで気になることがある方は、ご相談ください。